香味表現と言うと主に2種類分けられると思います。
酸味、苦味といった味覚表現と、アプリコット、アップルといったコーヒー以外の物に例えた官能表現です。
こういうのをPOP等の商品説明に、焙煎豆ごとに書いているお店も多いのですが、当店では現在は書いておりません。一応、以下のように考えてのことです。
味覚表現について
酸味、苦味などは主には焙煎で形成されるものなので、焙煎の度合い(焙煎度)によって大体決められます。
産地の標高が高いと酸味が強くなるとか、水洗式で加工されると酸味が強くなるとかいったことはあるかもしれませんが、それらは同等の焙煎度のもとで比べたときの話です。
それなのに、ミディアムロースト(浅煎り)のコーヒー豆に「しっかりした酸味があります」とか書くと、焙煎度が浅いから酸味が強いだけなのに、生豆由来の特徴と誤解を招いてしまいます。
なので、こういった表現は焙煎豆の商品説明には記載するべきでは無く、焙煎度によって酸味や苦味がどう変わるかということを説明する絵が別に一枚あればいいと思っています。
官能表現について
カッピング(コーヒーのテイスティング)のトレーニングを受けたもの同士が、共通言語としてフレーバーホイール(下図)の言葉を使ってコーヒーの香味について語り合うのはいいと思います。
「アプリコットちょっと出てるよね?」とか。
ですが、そういう者でないのなら、官能表現は個人の主観で楽しむものです。「自分はこう感じた」でいいと思うのです。「焼きいもの皮」とか「生姜」とか自分なりの表現を見つけてニヤニヤしてればいいと思うのです。
それを店側の主観で感じたフレーバーをそのまま商品説明にまで書いてもしようがないと思います。だって主観なんですから。
仮に、カッピング(テイスティング)の達人が、アップルだのブルーベリーだの書いたとしても、それを購入して家で飲んでみたお客様が感じる印象は「よくわからない」がほとんどで、せいぜい「そう思えないこともないかな」ぐらいのもんだと思います。尋ねられたら「自分は紅茶っぽく感じます」とか「しばしば土っぽいとか言われています」とか答えはしますが、それよりも試飲してご自分で感じていただくことを勧めるようにしています。
問題点
上記のように香味に関する記載を商品説明から省くことによって生じる問題は、商品説明が面白くなくなることです(^_^;)
香味表現を省くと、商品説明は、産地のエリア、標高、豆の加工方式、品種、収穫時期、取得している認証といった、スペック情報だけが淡々と並ぶことになります。
豆を客観的に選んでいただくために、スペック情報は必要と思います。しかし、お客様が飲んだ時にどういう体験ができるか?ということを想像しやすい味覚表現が書かれていないと、つまらないとも思います。
これについてはあまり良い解決が見いだせず、面白くないPOPになってしまっていると感じています。