コーヒー豆の加工方式とは、収穫されたコーヒーチェリーを生豆に加工・精製するプロセスにおいて採用される方式のことです。
コーヒーチェリーの構造
加工方式の説明に先立ち、コーヒーチェリーの構造です。
以下の図はコーヒーチェリーの構造を説明したものです。
図のように通常1つのチェリーに2個の生豆が入っています。
①をセンターカットと言います。焙煎したコーヒー豆を見ると、真ん中を縦断する線があるのが見て取れると思います。それがセンターカットです。真ん中をカットしている線なのでセンターカットと覚えれば良いです。
②は胚乳です。これはお米などでも親しみありますよね。
③は薄い柔らかい皮でシルバースキン(銀皮)と言います。ピーナッツの皮みたいなイメージです。
④は③より少し固め&厚めの皮でパーチメント(内果皮)と言います。
⑤はヌルヌルした粘質物でミューシレージ(ペクチン層)と言います。サクランボを生で食べると種の周りがヌルヌルしたものが残りますよね。それと同様のものです。
⑥は果肉で、⑦は果皮と言います。
コーヒーチェリーから③~⑥を除去して生豆を取り出す方法が「加工方式」です。
(③はセンターカットに挟まって残ってたり、取り除かれずに残ったままのこともありますが、焙煎によってほとんど消失します。さらに稀に果肉がついたままのこともありますが、これは香味に悪影響を及ぼす欠点豆なので、見つけたら取り除いて捨ててしまいます。)
水洗式 (ウォッシュト)
水洗式は以下のプロセスでコーヒーチェリーから生豆が取り出されます。
- 収穫
まずは赤く熟したチェリーを摘み取る - 果肉除去
チェリーの果肉をパルパー(果肉除去機)にて除去する - ぬめり(ミューシレージ)除去
- パーチメントについたぬめり(ミューシレージ)を除去する
- ※除去方法には大きく分けて発酵槽に入れ酵素の力で除去する方法と、ミューシレージリムーバとよばれる機械で強制的に除去する方法があります。
- 洗浄
ヌメリがとれたパーチメントコーヒー(パーチメントが残ったコーヒー生豆)を水洗する - 乾燥
含水率が11-12%程度になるまで乾燥する乾燥方法には主に天日乾燥、乾燥機を使用した機械乾燥があります。 - 脱穀
脱穀機でパーチメントを取り除き、生豆を取り出す
ウォッシュト(水洗式)では加工過程で異物や欠点豆が除去されやすく、雑味のないクリーンなコーヒーができやすいという特徴があります。
また、酸味、華やかな香りが出やすいと言われています。
乾式 (ナチュラル)
乾式は以下のプロセスでコーヒーチェリーから生豆が取り出されます。ウォッシュト(水洗式)と比べてシンプルな工程になっています。
- 収穫
まずは赤く熟したチェリーを摘み取る - 乾燥
そのまま拡げて乾燥する - 脱殻
十分に乾燥してカリカリになったところを脱殻する
乾式はエチオピア、イエメンの伝統農法です。それがブラジルなどの水資源の乏しい産地で広がりました。
そのように産地の自然環境等に対応して採用されてきたナチュラルですが、近年ではその特徴的なフレーバーが人気を集め、中米などで意図的に採用されています。
半水洗式 (パルプトナチュラル, ハニー)
半水洗式では以下のプロセスでコーヒーチェリーから生豆へと加工されます。
- 収穫
まずは赤く熟したチェリーを摘み取る - 果肉除去
チェリーの果肉をパルパー(果肉除去機)にて除去する - 乾燥
ぬめり(ミューシレージ)のついたままのパーチメントコーヒーをそのまま乾燥する - 脱殻
十分に乾燥してカリカリになったところを脱殻する
半水洗式はブラジルで開発された方式です。
伝統的なナチュラルと比較し、果肉除去のプロセスで異物や不良豆が取り除かれるため、精製度を高められるというメリットがあります。
また、果肉がついたまま乾燥させる乾式と、ミューシレージのみが付着した状態で乾燥させる半水洗式では、風味の質にも差が出てきます。
スマトラ式 (ウェットハル)
スマトラ式は主にインドネシアのアラビカ種のコーヒーで使われる方式です。
以下のプロセスでコーヒーチェリーから生豆へと加工されます。
- 収穫
まずは赤く熟したチェリーを摘み取る - 果肉除去
チェリーの果肉をパルパー(果肉除去機)にて除去する - 乾燥
ぬめり(ミューシレージ)のついたままのパーチメントコーヒーをそのまま乾燥する - 集荷
部分的(水分40~50%)に乾燥したパーチメントコーヒーを業者が農家から集める - 脱穀
脱穀機でパーチメントを取り除き、生豆を取り出す - 乾燥
含水率が11-13%程度になるまで乾燥する
スマトラ式は唯一生豆の状態で乾燥させる方式(他はパーチメントコーヒーの状態で乾燥)です。農家と集荷業者の分業の都合から自然発生的に生まれたと言われるこの方式がマンデリン独特のフレーバーに寄与しています。
モンスーン式
乾式加工の生豆を10cm程度の厚さに広げ、高湿度のモンスーンに10日程さらします。
その後、麻袋に詰めて、風通しの良い状態で数ヶ月かけて水分を抜きます。
コーヒー豆がインドからヨーロッパへ帆船で輸送された時代は、長期航海中に船倉内の豆に湿度で独特の外観と香味が生じました。
航海日数が大幅に短縮された現在において、当時のインドコーヒーを人為的に再現している方式です。
モンスーン処理の適当な写真を見つけれなかったので、動画を案内します。(3:40ぐらいからモンスーン)
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