粉で濾す?

置き去り

【粉で濾す?】

コーヒーのペーパードリップで「粉で濾す」と言う表現を聞いたことありますでしょうか?

「”紙で濾す”の間違いでは?」と思われるかたもいらっしゃるかもと思い、説明記事を書いてみることにしました。

【まず思いつくのは「紙で濾す」】

「濾す」を辞書で引くと「液体などに混じったごみやかすを,布・紙・フィルターなどで取り除く」と出てきます。

ペーパードリップによるコーヒーの抽出では、コーヒーの粉と液体が混ざった状態になりますが、粉は紙で取り除かれて、液体だけが落ちます。これは「紙で濾す」です。

【もう1つが「粉で濾す」】

ドリップ抽出ではもうひとつの「濾す」があります。それが冒頭の「粉で濾す」です。

コーヒーの粉は多孔質になっていて、その一つ一つの部屋や壁にコーヒーの成分が存在しています。そして、その成分には美味しい成分もあれば不味い成分もあります。

コーヒー豆のハニカム構造
焙煎されたコーヒー豆は多孔質になっています。

当然、コーヒーを淹れる者としては、美味しい成分だけをカップの中に取り込みたいわけです。

しかし、不味い成分を紙で濾すことはできません。美味しい成分だけでなく不味い成分も紙を通過することができてしまいます。

じゃあ、どこで濾すかというと、コーヒーの「粉で濾す」のです。

粉から美味しい成分は溶かし出しつつも、不味い成分は粉に置き去りにするのが、「粉で濾す」ということです。

置き去り
不味い成分を置き去りにします。

「紙で濾す」のは紙が勝手にやってくれるので、意識すべきは「粉で濾す」のほうです。

「美味しい成分だけ溶かし出して、不味い成分は置き去りにする」
そうイメージしながら淹れると、なんとなく淹れるより楽しんでいただけると思います。
「美味しくなあれ、美味しくなあれ、まずいのは入っちゃやーよ・・・^^;」
そんな感じで、ぜひやってみてください。I can do!

ミルクに合うコーヒーとは

ミルク&コーヒー

ミルクに合うコーヒー。これは「酸味の少ないコーヒー」「アイスコーヒー用(サマーシーズン)」と並んで、当店では最も多いリクエストの一つです。

フレッシュを1ポーションだけ入れるのでは無く、カフェオレやカフェラテのように牛乳が全体の半部以上になるぐらい入れるとして話を進めます。

【なにはともあれ焙煎度】

この場合も焙煎度で選んでいただくといいと思います。

ミルクに負けない苦さがあるコーヒーということで、深煎りのコーヒーが良いと思います。
個人的にはフレンチ、イタリアンといった極深煎りがベストと思うのですが、一般のお客様や当店の豆を使っていいただいている飲食店様の声では、フルシティが一番好評のようです。

なので、最近は「ミルクに合うコーヒー」をお求めのお客様にはフルシティをオススメするようにしています。(いちオッサンの主観で推してもしょうがないので^^;)

まずはフルシティで試して、苦味が足りなければフレンチやイタリアン、苦すぎるようならシティというように二回目で調整していただければと思います。

【決めた焙煎度の中から何を選ぶか】

そして次のステップは「決めた焙煎度の中からどれを選ぶか?」ということになります。
ミルクをたっぷり入れると、コーヒーそのものの風味の違いはマスクされわかりにくくなってきます。したがって、コスパを考えると一番お求めやすい価格のものがオススメになります。こう言うと身も蓋もないですが、「あまり差が出ないのならお買得なので良いのでは」とうことです。当店の場合は各種ブレンドがそれになります。
「たまには、いつもと違った風味のカフェオレを」という場合は、当店のライナップでしたら、エチオピア イルガチャフィなどは、極深煎りにしても、ゼリーにしても、カフェラテにしても、個性的な香りが残りますので、いい選択肢だと思います。

これから寒くなってくると、ミルクたっぷりのコーヒーはホカホカしていいですよね!
ミルクのベストパートナーたるコーヒー豆を見つけてください。
ミルク&コーヒー

甘いコーヒーってなんだ?

I love sweetness.

前回は「ワインフレーバーのあるコーヒーとは」ということを書きました。
今回は「甘味のあるコーヒーとは」です。

【コーヒーの甘さ?】

苦味、酸味は誰もが絶対に感じる味覚です。浅煎りのコーヒーなら酸味を感じるでしょうし、深煎りのコーヒーなら苦味を感じると思います。
これに対し甘味は、「ブラックのコーヒーに甘味?」と、いまひとつピンと来ないかたもいらっしゃると思います。
一方で「甘いコーヒーが欲しいのですか・・・」と甘味を求められているお客様も少なからずいらっしゃいます。
そんな甘味を有するコーヒーについて、当店では以下のように案内しています。

コーヒーの甘味には2種類あると思われます。
1つ目が浅煎り~中煎りのコーヒーに感じられるほんのりした甘さで、2つ目が深煎りのコーヒーに感じる甘苦さです。

【1. 浅煎り~中煎りのほんのりした甘さ】

前者はカッピング(コーヒーのテイスティング)で「1リットルの水に5gの砂糖を溶かした以上の甘味があること」という具体的な評価項目となっています。
「1リットルの水に5gなんて、そんな微妙なのわかるか?」と思われるかもしれません。200mlに1gでも良いと思いますので、実際に作って、真水と比べてみてください。意外にわかりますよ。
カッピングではこの項目をクリアすると10ポイント加点されるのですが、よっぽどのことが無い限り10ポイント加点されるそうです。
つまり、スペシャルティコーヒーと俗によばれるような品質の良い豆であれば、全てこの程度の甘さは持っているということです。

「そんなこと言われても、あまり甘いという感じはしないけど?」というかたに、試していただきたいのが後者「深煎りの甘苦さ」のほうです。

【2.深煎りの甘苦さ】

こちらのほうが「甘い」という感覚をより認識しやすいと思います。
深煎りといっても、あまり深過ぎると苦味が強く出すぎて、甘さが隠されてしまいます。
なので、「イタリアンロースト」よりは「フルシティロースト」「フレンチロースト」ぐらいの焙煎度のコーヒー豆を選ぶほうが良いと思います。

ハンドドリップで淹れるかたなら、80度ぐらいのお湯で少し長めに時間をかけて淹れてみてください。
湯温を低くしているのは、苦味の溶解を少し抑えるためです。(甘味は低めの湯温でも出ます。)

【Taste sweetness!】

コーヒーの甘味はわずかなもので、フレーバー(香り)から来ているものとも言われています。「砂糖をひとつまみ」入れたほうがよっぽど甘いです。それでも、多くのコーヒー好きが求めてやまないのが甘味です。「今まで感じたことが無い」という人も意識するだけで変わってくることもあると思います。コーヒーの自然な甘さを楽しんでみてください。

I love sweetness.

コーヒーのワインフレーバーの秘密

【ワイニーが流行っている模様】

最近ワイニー(Winey)やワインフレーバーといった香りのコーヒー豆を求めるお客様がちらほらいらっしゃいます。結構流行っているみたいですね。

一応、それに応えるべく昨日まで提供していたのが、コスタリカ ガンボアというコーヒー豆のつもりだったんですが、やや弱かったでしょうか?
コスタリカ ガンボアは完売しましたが、明日から入替えで、同じく中米の パナマ ハートマン というコーヒー豆を始めます。

【ワイニーはナチュラル方式の特徴】

ブラジルのナチュラル方式
ナチュラル方式では果肉をつけたままの状態で乾燥させます。

ワインフレーバーは、果肉をつけままコーヒーチェリーを乾燥させるナチュラル方式で生豆に加工されたコーヒー豆の特徴です。
マンデリンの独特のフレーバーがスマトラ式という独特の加工方式によるものであるのと同様です。
と言うと、するどいかたなら、「ブラジルはナチュラルなのに全然ワインっぽくないぞ」と思われるかもしれません。たしかに、そのとおり、ブラジルのコーヒー豆は伝統的にナチュラル方式で加工されることが多いですが、ワインっぽさはあまり感じないと思います。

【ナチュラルなら何でもというわけでは無い】

同じナチュラルなのに違うのは、乾燥フェーズにおける湿度の差によると言われています。
湿度が低いため短期間で乾燥させることができるブラジルに対し、中米では湿度が高いため比較的にゆっくり乾燥していきます。時間がかかる分、果肉の糖分がじっくりと豆に浸透していき、醗酵した果実のようなワインフレーバーのポテンシャルを持つ生豆が出来上がるそうです。

「それなら湿度の高いアジアでも作れるのでは?」と思われませんでしたか?
そのとおりで、インドネシア、インド、ミャンマーなどでもワインフレーバーを感じることができる生豆が作られています。機会があれば、これらも紹介していきたいと思います。

しかし、概して、この種の生豆はとても高価です。ブームなこともありますが、元々湿度が高くてナチュラル方式には不向きな産地で、強引にやっているわけなので生産コストがかかるのだと思われます。
しかも、ウォッシュト方式のように最初に果肉を剥ぐプロセスで不良豆が取り除かれないので、品質のバラツキが大きいのです。高いのに欠点は多めという焙煎屋泣かせの豆なのです。必然的に提供価格も高めとなってしまいますが、そういう事情あってのことですので、どうぞご了承下さい。

まずは、明日から提供開始するパナマ ハートマンでお試し下さい!

ワインフレーバーはナチュラル方式の特徴です
ワインフレーバーはナチュラル方式の特徴ですが、ナチュラルなら何でもというわけではありません。

寒い時期にも対応できるTABLE FOR TWO 新メニューを開発中です

すっかり涼しくなりましたね。朝晩は寒いぐらいです。
そんな状況なので、ただ今、Reiko に替わる TABLE FOR TWO 対象の新メニューの開発を急ピッチで進めています。

これまでの状況は

これまで、2013年,2014年は無糖カフェオレベースの Reiko Essence, 2015年は無糖リキットコーヒーのReikoを作ってきましたが、いずれもサマーシーズン向けの商品です。
それにも関わらず強引に2013年の冬は Reiko Essence を提供し続けましたが、案の定、売れ残りが出てしまいました。
それに懲りて2014年の冬は Reiko Essence は作らなかったので、TABLE FOR TWO 対象メニューがひとつも無い状態になってしまいました。

今年の冬は

「それでは今年(2015年)の冬はどうしようか?」というのが今置かれている状況です。

考えた結果、今年の冬は当店のメインであるコーヒー豆を対象メニューにしようというところまでは決めました。

TABLE FOR TWO は「先進国の人はヘルシーなメニューを摂ることで不要なカロリー摂取を抑止することができ、そのぶん(メニューの代金のうち20円)が途上国の子どもたちの給食1食分となって届けられる」という仕組みになっています。
TABLE FOR TWO の仕組み

そのため、普段は砂糖やミルクを入れてコーヒーを飲まれている人が、ブラックでも飲みやすいコーヒー豆にしたいと思います。砂糖やミルクをたっぷり入れられてしまってはカロリーオフになりませんからね。

砂糖やミルクを入れたくなるケースというのは、苦味、酸味を嫌味に感じる時に、「ちょっとこのまま飲むのはきついな」と思って、砂糖やミルクを入れてマスクしようとするのだと思います。
したがって、ブラックで飲んでも、苦味や酸味が気にならないコーヒー豆を対象メニューにすればいいのだと思います。

つまりは、以下のポイントに留意して商品開発すれば良さそうと考えています。

これだけならブラジルでも良さそうですが、一般的なブラジルのナチュラル加工の豆より、ウォッシュト加工のコーヒーのほうがすっきりブラックでの飲みやすいように思います。

さらにプラスアルファとして、ウガンダなどTABLE FOR TWO が給食を届けている国の豆を材料に使えるとなお良いかなと思ってます。

Reiko の販売終了を予定している11月には新メニューを販売開始する方向で進めていきますので、楽しみにしててください!I can do!
Africa3

コーヒーの香味表現

フレーバーホイールといってカッピングではこれを元にフレーバーが表現されます。

香味表現と言うと主に2種類分けられると思います。

酸味、苦味といった味覚表現と、アプリコット、アップルといったコーヒー以外の物に例えた官能表現です。

こういうのをPOP等の商品説明に、焙煎豆ごとに書いているお店も多いのですが、当店では現在は書いておりません。一応、以下のように考えてのことです。

味覚表現について

酸味、苦味などは主には焙煎で形成されるものなので、焙煎の度合い(焙煎度)によって大体決められます

産地の標高が高いと酸味が強くなるとか、水洗式で加工されると酸味が強くなるとかいったことはあるかもしれませんが、それらは同等の焙煎度のもとで比べたときの話です。

それなのに、ミディアムロースト(浅煎り)のコーヒー豆に「しっかりした酸味があります」とか書くと、焙煎度が浅いから酸味が強いだけなのに、生豆由来の特徴と誤解を招いてしまいます。
なので、こういった表現は焙煎豆の商品説明には記載するべきでは無く、焙煎度によって酸味や苦味がどう変わるかということを説明する絵が別に一枚あればいいと思っています。

官能表現について

カッピング(コーヒーのテイスティング)のトレーニングを受けたもの同士が、共通言語としてフレーバーホイール(下図)の言葉を使ってコーヒーの香味について語り合うのはいいと思います。
「アプリコットちょっと出てるよね?」とか。
フレーバーホイールといってカッピングではこれを元にフレーバーが表現されます。
ですが、そういう者でないのなら、官能表現は個人の主観で楽しむものです。「自分はこう感じた」でいいと思うのです。「焼きいもの皮」とか「生姜」とか自分なりの表現を見つけてニヤニヤしてればいいと思うのです。

それを店側の主観で感じたフレーバーをそのまま商品説明にまで書いてもしようがないと思います。だって主観なんですから。

仮に、カッピング(テイスティング)の達人が、アップルだのブルーベリーだの書いたとしても、それを購入して家で飲んでみたお客様が感じる印象は「よくわからない」がほとんどで、せいぜい「そう思えないこともないかな」ぐらいのもんだと思います。尋ねられたら「自分は紅茶っぽく感じます」とか「しばしば土っぽいとか言われています」とか答えはしますが、それよりも試飲してご自分で感じていただくことを勧めるようにしています。

 問題点

上記のように香味に関する記載を商品説明から省くことによって生じる問題は、商品説明が面白くなくなることです(^_^;)
香味表現を省くと、商品説明は、産地のエリア、標高、豆の加工方式、品種、収穫時期、取得している認証といった、スペック情報だけが淡々と並ぶことになります。
豆を客観的に選んでいただくために、スペック情報は必要と思います。しかし、お客様が飲んだ時にどういう体験ができるか?ということを想像しやすい味覚表現が書かれていないと、つまらないとも思います。
これについてはあまり良い解決が見いだせず、面白くないPOPになってしまっていると感じています。

POPは鋭意改善中です。
POPは鋭意改善中です。

今はそうなっていますが、なんとかもっと「そそられる」POPにしていきたいとは思っています。I can do!

大切なものは、目に見えない? (Le plus important est invisible)

たまたまTEDのスピーチを視聴した Seth Godin さん。

なんとなくブログにアクセスしてみたらとても簡潔なポストが印象的で、その後もたまに読んでいます。
そのブログに、最近、こんなポストがありました。

Tires, coffee and people

Seth さんが言いたいのは最後の People で Tire, Coffee はそんための喩えに過ぎませんが、自分はコーヒー豆屋なので Coffee について言わせていただきます。

抜粋するまでも無い短いポストですが、敢えてコーヒー部分のみを抜粋したのが以下です。

The most important part of a cup of coffee is the beans. The grinder, the machine, the barista pale in comparison to the quality of what you start with.

And yet we upgrade our coffee maker instead of buying from a local roaster (or roasting our own).

美味しいカップを目指して、抽出器具、機器をとっかえひっかえする人がいらっしゃいます。
個人でいろいろ試すぶんにはいいのですが、器具を取り扱う立場のコーヒー屋がこれをやり出すと厄介です。

「スペシャルティコーヒーにはフレンチプレスです!」

「微粉がカップに入らないエアロプレスがいいですよ!」

「やっぱりケメックスですね!」

「これからはゴールドフィルターがオススメです!」

???
これでは何の一貫性も無く、お客様は何を信じていいのやら。やれやれですね。

抽出器具はその器具の理屈に基づいた材料&方法で粛々と淹れるためだけのもので、味を美味しくするためのものでは無いように思います。

Sethさんもおっしゃるとおり、やっぱり肝心なのは焙煎豆と思います。

そして、さらに焙煎豆にクローズアップすると、産地、ブランド、希少価値などに惑わされず、「焙煎後の鮮度」、「不良豆の少なさ」、「焙煎度が好みに合っているか」を重視したほうがいいと思います。

これからコーヒーがどんどん美味しく感じるようになっていく季節です。本質を見失わず、お好みの一杯にありついてください。

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